■夜の隙間


その日、獄寺がシャマルの部屋に行ったのはただの気まぐれ。
けして前々から約束していたわけではないはずなのに、それに計画めいたものを感じるのは何故だろうか。
思考の回らない頭で考える。
体中が熱をもって、アツい。

「ん…シャマ…」

濃厚な口づけを合図にシーツの海に溺れれば、それからは快楽の波が押し寄せる。
それだけ。
いつもどおり、それだけのはずだった。
それなのに、今夜に限って愛撫をするシャマルの手が優しいから。
優しすぎて、もどかしくて、泣きたくなって。

「な…んで、もっと、いつもみたいに…」
「ん?いつもみたいに激しくして欲しいってか?」

茶化したように言えば緑の瞳を涙に濡らして形だけの否定を返す。
本当は、もっと激しくして欲しい。
いつものように、痛みとも快楽とも区別がつかないくらいに突いてほしい。
もっと壊して欲しい。
しかし、それを素直に出せるわけもなく、獄寺は幼子のようにただ頭を振る。

「素直じゃないねぇ、隼人は…」

ちゅ、と音をたてて胸の突起に吸い付けば、びくりと体を震わせて快楽を主張する。
必要以上にぐちゃぐちゃのどろどろにして慣らした獄寺の蕾はシャマルの欲望を一層キツく咥えて離さない。
細い脚をシャマルの腰に絡ませては奥へ奥へと欲望を誘う。
ゆらゆらと暗闇の中、揺れる肢体は幻のようで。
それを繋ぎとめるようにかちり、と獄寺の腕に冷たいものがはめられた音がした。

「ふあ…、シャマ…?」
「プレゼントだ、とっとけ」

確認する間もなく体位を変えられて、今度は獄寺がシャマルを跨ぐ形になる。
近くで揺れた蜂蜜色の瞳に吸い込まれるように唇を合わせればそれが二度目の合図。
下から奥突きあげられればあとは快楽に堕ちるだけ。

「んあっ、ふ…ああっ、しゃま…シャマルっ」

あられもない痴態を曝して、思う存分嬌声を上げて、獄寺は絶頂を見た。
きゅうと締まった獄寺の蕾に自らの欲を吐き出したシャマルは、彼の耳元で小さく、優しく囁いた。

「Buon compleanno、隼人」

母国語のそれを、獄寺が認識したのは次の日の朝。
自らの腕に付けられたブランド物のブレスレットが放った光をみた時だった。


2008/09/09


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