■【今日の1859】「卒業」


ふわりと、桃色の花弁が鼻をかすめた。
過去の忌々しい記憶がよみがえる。
何度、この窓からこの景色をみただろう。
おそらく普通の学生よりも倍は見ているだろう。

でも、それも今日で終わりだ。

「僕は今日、並盛からいなくなるよ」

けして振り向く事はしない。
だから君がどんな表情をしているかなんてわからない。

けれども。

この先にある未来を君は知っているはずだ。

「先に行ってるね、隼人」
「…あぁ、待ってろ」

一年後、君を出迎えるための準備をするために。
君の側にいるための「言い訳」を作るために。


僕は並盛を捨てた。


君の中に少し流れるその国を見るのが楽しみだよ。


一年という時は短くも長くもあるけれど。

たまに狂おしいほどの寂しさに囚われるけれど。


後ろで唇をかみ締めた隼人があまりに愛しくて
力の限り、抱き締めた。


2008/11/12


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