■箱庭の王様
凛とした赤が翻った。
それは流した血の色によく似ていて、彼を地獄へと突き堕とす。
(いや、はじめから地獄に居たのだ)
不幸、と一言で片付けるには重すぎる人生に自嘲めいた笑いがこみ上げる。
憎む事しか知らない。
裏切られる事しか知らない。
そんな五十数年に渡る長い戯曲の中のほんの寄り道。
しかし、この八年という歳月はやけに明るい色をしていて、彼を戸惑わせた。
海の底に居ながらも、陽の光に照らされているような、そんな錯覚。
サッカーにも自分にも盲目な瞳を持つ子供はあれだけ慕う言葉を吐いたものと同じ口で、たった今、彼を非難して去って行った。
それでいい。
彼は自ら望んでレンズとレンズを向かい合わせた毎日に終止符を打った。
地獄に道連れにするには、その子供はあまりに眩しすぎた。
この結末は望み通り。
それなのに、こんなにも苦しいのは何故だろうか。