■茜の空がいきつく果ては(3)


丈と光子郎と別れた後、見慣れたマンションの群れを頭上に、太一とヤマトは一言も交わさず歩いていた。
群青の空から優しく降る光はふたりの影を一層濃く地面に縫い付ける。
言葉はなくても、互いの歩みに歩調をあわせているのが一緒にいたいという明らかな意思表現になっていた。
向かい合わせにある自分達の家に一歩近づくごとに胸が張り裂けるような切なさに襲われる。
太一とヤマトの本当の関係について知っているのは、あの冒険を共にした選ばれしこどもたちとヤマトのバンドメンバーぐらいだ。
彼らは太一たちの側にいる時間が長いから、互いの絆が半端なものではないから気付いてくれた、そして受け入れてくれたのだ。
だからただ「好き」というだけの感情しか持たない女子にばれることなどなかったはずだった。
あまりに合わないピースにこうゆう事にはいつも働く頭をかしげながら太一は隣のヤマトを改めてみた。
一陣の風に動く肩までの金、虚ろな青にかかる長い睫、透き通るような白。
何処をどうすればここまで完璧なまでの容姿ができるのか、
太一はこの綺麗な人が親友であるとともに恋人でもあることに常に優越感をもっていたが、他者からアプローチされているのをみる時だけはそれを悔いる。
自分がヤマトの事に関しては、異常なまでの独占欲と破壊願望をもっていることを知っているからだ。
優しくしたいのに優しくできない自分がどんなに大輔たちの前で先輩ぶっていてもまだまだ餓鬼だという事を深く思い知らされる。
それでも、どんなに格好悪くてもヤマトだけは誰にも渡したくないから。
太一はすうと息を吸うと、隣のヤマトの腕をひっぱり、自慢の足で家まで駆け出す。

「た、太一!?」

突然のことにヤマトは声を荒らげるが、太一はすでに聞く耳を持たず、自分の家とは反対のエントランスへと駆け込んだ。
エレベーターを待つのももどかしく、階段を一段抜かしであがるとヤマトの家へ駆け込む。
もともと勝手知ったるヤマトの家だ。
合鍵がどこにいつもあるのかなんでわかっているから鍵をあけるのも苦労せず、この家の主である今だ現状を理解していないヤマトを部屋へと招きいれる。

「ヤマト…」

いつ来ても綺麗に片付けられているヤマトの部屋はいつも見慣れているはずなのに何処か見知らぬ風景のように感じられて、それが不安になり太一はヤマトを力のままに抱きしめる。
ぴりりとした痛みから我をとりもどしたのかヤマトが少しの抵抗をしめす。
そんな抵抗などものともせず、太一はスプリングのきいたベッドにヤマトの金を散らすとなにかを発しようとした口を自分の口で塞ぐ。
塞いだあと、そのまま深いところまで味わうかのように舌を浸透させ、歯を舐め、口内を犯す。
深い口付けにどちらのかわからない唾液が端からシーツへと流れ落ち、官能的に魅せる。
口付けたまま、ヤマトのシャツのボタンを器用に片手ではずしていき、その白い肌に指を這わす。
途端、ヤマトの体がはね、口からは甘い響きが漏れる。

「た…いち?」
「ヤマトがいけないんだ。ヤマトは俺のものなのに…」

それなのに。
そんなに目立つから。そんなに綺麗だから。
出来ることならこのまま閉じ込めて自分だけしかみせないで生活させていきたいけれども。
胸の突起に歯をたてると白い肌が震えた。
ぷくりとたってきたその突起をなぞるかのように舌で弄び、指で潰す。

「あ…あぁっ…たいちぃ…」

切なく太一を呼ぶ声は下半身に響き、太一の欲望が首を上げる。
ヤマトのそれもズボンの上からでもわかるくらいにはちきれそうになっているのがわかり、太一の口元が弧を描く。
ヤマトは無意識なのだろうが胸を弄ばれながら腰が揺らいで、太一を誘っているかのようだ。
熱に浮かされながらも太一は絶え間なく嬌声をあげているヤマトへの刺激をやめ、自分の前をくつろげる。
今までの快楽がなくなり、驚いたヤマトの目の前に大きくそそり立った自分を突きつける。

「舐めて」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        一瞬なにを強要されたかわからなかったヤマトだが、目の前につきだされたそれをみてかあっと白い肌を朱に染めると、太一に抗議するかのように目をむける。
しかし、太一は口元に不敵な笑みを浮かべたまま、そそり立つそれをさらにヤマトに近づける。
近づいてくるそれに観念したのか、ヤマトは恐る恐る舌を這わす。
太一とこうゆう関係になり、何度かしたことはあるが幾分太一のそれは太く、口内に納まりきらないのと、
やはり美味しいものというわけではないためヤマトはそれが苦手だった。
それでも、たまにしてあげると太一が凄く喜んでくれるのもあり、ヤマトは懸命に奉仕をしつづけた。
始めは先端に舌を這わせ、次に根本から先端にかけ舐めあげ、そして包むかのように咥える。
手をそれに添え、口を上下に動かすのと同時に手でもすりあげ太一を絶頂へと導く。

「ふっ…あ、ふぅ…ん…」
「いいぜ、ヤマト。気持ち良い」

太一の手が優しくヤマトの髪を撫でる。
その手に答えるかのようにヤマトは更に激しく口を動かすと太一の吐き出した精を口で受け止めきれず顔へと散らした。

「やっべ…」

白い精を不覚にもヤマトの顔面にかけてしまい、白く汚れたヤマトは一層官能的になり、解放したばかりの欲が再び首を上げる。
太一は耐え切れず、ヤマトのズボンを下着と共に脱がし、自分の唾液を指を絡ませ秘部へとそれを這わす。

「あっ…つぅ…」

少し苦しい顔をしたが、ヤマトのそこはすんなりと太一の指を受け入れ、快楽へと歪む。
太一から与えられる快楽になれたからだはこれからの刺激に胸を震わせる。

「えろいなあ、ヤマトは」
「だ…れのせいで、こう…」
「そうだな、俺のせいだな」

でも、半分はヤマトのせいだぜ。
低く腰に響く声でヤマトの耳元で囁く。
途端、白い背中が弧を描く。
はちきれそうなヤマトのそれはぐちょぐちょに濡れていて、秘部からは卑猥な音が響く。
指を増やして胸の突起を同時にまさぐる。
惜しみなく痴態をさらすヤマトに自分の欲もはちきれそうになるのをどうにか我慢し、太一はヤマトを攻め続ける。

「た、いち。もぉ…早く、きてぇ」

ヤマトの秘部は指の愛撫では足りず、太一を求めてきつくしまる。
ヤマトのおねだりを合図に太一はそこから指を引き抜くと、優しい口付けをひとつ落とし、それと対照的に激しく腰を打ちつけた。

「ああっ、たいちっ」
「ヤマトっ、ヤマトっ」

互いの名前を壊れたかのように呼びあい、激しく求め合う。
ヤマトの秘部は太一を放さないかのようにきつくしめつけ、太一を絶頂へと昇りつめる。
太一はヤマトの口内を犯し、指で胸の突起を潰し、腰を揺らす。

「も…だめ、いくぅっ」
「いけよ、ヤマト」

ひときわ高い声をあげ、ヤマトは己の欲を吐き出した。
それとほぼ同時にヤマトの中に太一も欲を注ぎこんだ。











「お前は俺のもんなんだからな」

情事後、釘をさすかのようにヤマトに向けられた茶色の瞳にヤマトは不敵な笑みを向ける。
太一がこんな切羽つまって行為におよんだのは昼間の事が理由だ。
あまり拘れなくなってしまうこれからにヤマトと同様恐れを感じたのだろう。
ヤマトは太一がそう感じてくれていることで不謹慎にも喜びに震えた。

「そうだな、俺はお前のもの、そしてお前は俺のもの」

心配はいらない、とヤマトは微笑む。
太一はその笑みをみて驚きはしたが、同時に安堵した。
離れても何も変わらない自分達の関係を信じて。





そして、太一はとっぷりと黒につかった外に足をむけた。
合鍵をもとの場所へと戻し、エントランスへ向かう途中、何処かで覚えのある甘い香りがした気がした。
マンションの影にかくれて月の優しさはみえなかった。


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2007/09/13


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